料理人・室井大輔の原点を巡る一皿たち
「はじまり」——日本料理の奥深さを感じる導入
コースの幕開けを飾ったのは、「はじまり」と名付けられた「雲丹 茄子 出汁ジュレ」です。茄子のピュレの上に濃厚な赤雲丹、そして鰹と昆布の澄んだ出汁ジュレが美しく重ねられた一皿は、雲丹の甘味を受け止めながらも、最後には出汁の静かな余韻が残ります。華美さではなく、旨味を丁寧に重ねる日本料理の真髄を感じさせる、見事な導入となりました。

「憧れのごちそう」——懐かしさの中に新しさを
続いて供された「憧れのごちそう」は、「一口オムライス」。誰もが子どもの頃に心を躍らせたオムライスを、錦糸卵という和の技法で再構築しています。温泉卵のコクが加わることで、一口食べれば確かにオムライスだとわかる懐かしい味わいながらも、前菜として成立する軽やかさと繊細さを兼ね備えていました。この「翻訳力」こそ、日本料理人・室井氏ならではの表現と言えるでしょう。

「夏休みの記憶」——緻密に再現されたあの日の情景
「夏休みの記憶」として登場したのは、とうもろこしと潤菜の一皿。水を使わずに引き出されたとうもろこしの濃密な甘味に、潤菜の瑞々しさ、そして柚子の香りが重なります。醤油のニュアンスが焼きとうもろこしの香ばしさを呼び起こし、縁日の屋台で夢中になったあの夏の日へと誘われるような感覚。懐かしさを感じさせつつも、味わいはどこまでも緻密に計算されています。

「本物との出会い」——素材の生命力を感じる一皿
「本物との出会い」は、京都の名魚屋・遠藤商店との縁から生まれたという「鯛のカルパッチョ」。塩とオリーブオイルのみという潔い構成だからこそ、魚そのものの生命力が真っ直ぐに伝わります。料理人にとって、本物の食材との出会いは人生を変える体験。その記憶が、飾ることなく一皿に映し出されていました。

「夢見た料理人」と「原点の一皿」
「夢見た料理人」は「牛肉ハンバーグ チリ酢」。日本料理で馴染み深いチリ酢を、おろしハンバーグの記憶へと重ねる発想が光ります。肉の旨味を受け止めながら酸味が全体を引き締め、誰もが知るおろしハンバーグを日本料理ならではの技法で見事に再構築。思わず唸ってしまうような逸品でした。

そして「原点の一皿」として提供されたのは、室井氏の料理人人生が始まったというサラダ。アルバイト時代に賄いとして作り続けた一皿が、そのまま料理人としての礎になっていると言います。人参、セロリ、玉ねぎ、にんにくを使ったドレッシングは決して複雑ではありませんが、毎日食べたくなるような力強い味わい。料理の原点とは、案外このような一皿なのかもしれません。

少年の夢、その先へ
「大人になったら食べたかったもの」は、大きなカキフライ。子どもの頃、誰もが一度は夢見たであろう“巨大なカキフライ”を、一流の技術で本気で実現した一皿です。噛めば溢れる牡蠣の旨味、軽やかな衣、絶妙な火入れ。会場の熱量が最も高まった瞬間のひとつとなりました。

「少年の夢、その先へ」として供されたのは、「和出汁野菜カレー 毛蟹ご飯」。毛蟹の旨味をたっぷりと抱え込んだご飯だけでも十分なご馳走ですが、和出汁を軸にした野菜カレーが重なることで、料理はさらに次の景色へと進んでいくような奥深さがありました。


締めくくりのデザート「あの日の甘い記憶」は、ブランマンジェとパートブリック。牛乳プリンを思わせる優しい味わいに、小豆とクリームチーズを合わせることで、どこか懐かしく、それでいて今の感性に寄り添うデザートへと昇華されていました。最後まで「記憶」というテーマをぶらすことなく、コースは幕を閉じました。

料理人の“ウブ”と食べ手の“ウブ”が交差した夜
この夜、「ウブ」という舞台で描かれたのは、一人の料理人の人生そのものでした。そして、その人生を追体験するうちに、ゲスト自身の記憶も自然と呼び起こされていく。料理人の“ウブ”と、食べ手の“ウブ”。その二つが交差した瞬間、料理は単なる美味しい食事を超え、記憶を呼び覚まし、人生を少しだけ豊かにしてくれる食体験へと変わります。「ウブ」の哲学と、“麻布室井”として最後のコラボレーションに臨んだ室井氏の原点が、美しく重なり合った一夜となりました。

シリーズ「一流料理人の、ウブな一皿。」は、今後も様々なジャンルの名店シェフをゲストに迎え、継続的に展開される予定です。料理人の背景やストーリーを一皿の料理を通じて紐解くこの試みに、引き続きご期待ください。
イベント開催概要(※開催終了)
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企画名: 麻布室井 × ウブ コラボレーション「一流料理人の、ウブな一皿。」第二弾
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会場: 六本木「ウブ」
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第二弾ゲストシェフ: 麻布室井 室井大輔氏
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開催日: 2026年7月10日(金)※2部制・カウンター10席限定(各部)
店舗情報
六本木「ウブ」では、今回のような特別なイベントの他にも、日常を彩るノスタルジックなガストロノミー体験を提供しています。ぜひ一度訪れてみてはいかがでしょうか。
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名称: ウブ
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住所: 東京都港区六本木7-5-11 カサグランデミワ2F
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営業時間:
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月・火・水・木・金・祝日・祝前日・祝後日: 18:00 – 01:00
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土・日: 18:00 – 22:00(L.O. 料理21:00 ドリンク21:30)
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※土日は時短営業&アラカルト縮小メニューのみ
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定休日: 不定休
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座席数: 10席
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インスタグラム: @ubu_roppongi
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